私は住宅を設計する時に居心地を最も大事に思いながら設計しています。
設計においては、開口と壁の配置、部屋のボリューム、形、素材、寸法、場と場のつながりなどを決定してゆくことを積み重ねて、ある種の居心地を作り出します。そして、この多くの要素を調和させようとする時に前提として設定しなければならないもの、それは人が腰掛け、佇む場所です。
設計は敷地の中で居場所の位置を見出すことから始まります。
日当たりや明るさ、周囲との関係を目で確かめて、朝日の明るさの中で朝食がとれると気持ちがいいだろうな。とか、ここでソファーに深く腰掛けて遠くに見える景色を楽しめるようにしたいな。とか、冬の陽だまりの中でゴロゴロしながら本を読みたいな。とか。
そして点在する居場所が心地よく繋がるよう、プランニングを進めます。
それぞれの居場所については、どのように開き、どのように閉じるか、また、どのような光、景色を取り込むかを考えながら壁や開口の構成や寸法、素材を決めていきます。
そうやって、緻密につくられた住宅という器と、そこで過ごす人との媒体としてなくてはならないものが家具です。
クローゼットや靴箱といった、箱物の収納家具は大抵、建築工事で建物に造りつけて納めますが、ソファーやダイニングセットなどは、壁の中に組み込ませない方がすっきりとしますし、家具自体の美しさが感じられるので、置き家具が素敵だと思います。
私は設計図に必ず家具を書き込んでその空間の過ごし方を伝えるようにしています。
その場の行為は大抵、家具に寄り添って行われます。
家具の位置、大きさ、形を限定するのは、とても窮屈なことに感じられるかもしれませんが、
その空間にふさわしいものと考えると、それらは自ずと決まってきます。
居心地や家具を想定せずに作った空間は、家具の配置をあれこれやってみてもしっくりと納まらないということになってしまうように思います。
お持ちの家具があるときはその家具が適切に配置できるように空間を作ってゆくのが当然ですが、そうでない場合は、大抵hao&meiの傍島浩美さんに制作をお願いしています。
傍島さんの家具は癖のないその端正な作りが空間によくなじみますし、ナラやチェリーといった無垢の木の素材感がストレートに感じられ、年を経るごとにその深みを増し、長く付き合える一品となります。
世の中には安価な家具も沢山ありますが、素材と向き合って丁寧な仕事をされている家具にある魅力は、到底真似できるものではありません。
空間にジャストサイズの家具が入ってようやく、設計時に思い描いていた空間が実現します。
幸い、最近は置き家具についても建て主からご相談いただくことが多く、その辺りご理解いただいていることを有り難く思います。