Yasuko Kumazawa Architect Office
 京都御所の西の、孫である建主が受け継いだ400坪の土地の一部に建つ住宅です。この土地には、かつてお爺さんが暮らしていた母屋の他、昭和期に庭を囲むようにして増築された数寄屋造りの離れがあり、建主家族はそこに暮らしていました。道路沿いには板塀と数寄屋門があり、京都の町並みの風情が失われる中で京都らしさを残す貴重な佇まいでした。新たにつくる住宅はこの既存の板塀をできる限り残し、「伝統的な形態や技術、素材を用いた計画とすること」、「庭を取り囲む建物配置をとること」で、「町の記憶」と「以前の家と庭の記憶」、「家族と過ごした時間の記憶」を継承したいと考えました。
 住宅の内部は、家具の配置によって自然に居場所が生まれるような、現代の暮らしに適したプランとし、家の中にいくつかの居場所を点在させることで、さまざまな日常のシーンに対応できる空間をつくりました。
 ワークスペースから庭を望めば、屋根の掛かった半戸外のテラスと食堂といった居場所が庭越しに重なって見え、空間や暮らしの奥行きを感じさせます。
 建物が完成し、残した古い板塀と新たに建築した門棟とが違和感なく溶け合う様子に、町と人の記憶の継承を果たせたのではないかと思います。
所在地:京都府京都市上京区
家族構成:夫婦+子供2人
構造:木造2階建
敷地面積:247.39㎡(74.86坪)延床:住居部119.37㎡(36.11坪)
面積 駐車場13.62㎡(4.12坪)
用途:第2種住居地域
地域 美観地区 準防火地域
建ぺい率/容積率:60/200
施工会社:ツキデ工務店
設備:G-air全館空調換気システム
造園:ゾエン 蓑田真哉
家具:hao&mei 傍島浩美
写真:西川公朗

  • 花立町の家-1

    居間からダイニングの方を見る。居間ではプロジェクターで漆喰壁に照射して映像を楽しむ。天井高は2,250

  • 花立町の家-2

    居間から庭を見る。造作による木製開口部の室内の戸袋には障子が入っている。

  • 花立町の家-3

    大きく屋根が掛かった中間領域。中央の手水鉢は古家で使用していたもので水が溜まる仕掛けを造っている。隣は建主の実家で石畳でつながる。

  • 花立町の家-4

    庭から居間を見る。屋根の瓦と庭に敷かれた石は古家の庭にあったものを再利用している。

  • 花立町の家-5

    居間の内観。家具により重心が低く抑えられた空間。3人掛けソファーとキャビネットは家具作家の傍島さんの制作による。

  • 花立町の家-6

    廊下からダイニングキッチンを見る。リビングとダイニングを繋ぐ廊下の天井高は1,950

  • 花立町の家-7

    ダイニングの風景。腰壁のコーナー窓が庭に向かって開いている。右側の掃き出しの開口がデッキに繋がる。天井高は2.100

  • 花立町の家-8

    ダイニングテーブルを囲うよう配置した造作によるキッチンとカウンター収納。木質の素材の面材に取り囲まれた、家族の集まる親密な空間。

  • 花立町の家-9

    玄関から入った正面に開口があり、庭の緑が見える。

  • 花立町の家-10

    家族共用のワークスペースから庭越しにキッチン棟を見る。建物が庭を取り囲む構成によって以前建っていた屋敷の形を継承した。

  • 花立町の家-11

    2階の廊下から寝室を見る。左手には子供の個室が並ぶ。

  • 花立町の家-12

    2階の寝室。屋根なりの勾配天井が空間を包む。

  • 花立町の家-13

    庭からの夜景。白を基調とした内部空間の温かみが浮かび上がる。

  • 花立町の家-14

    木々の間を進むアプローチ。銅板の裾葺屋根が人を招き入れる。

  • 花立町の家-15

    アプローチの見返し。座面に竹を用いたベンチが右に見える。

  • 花立町の家-16

    アプローチの手前の格子引戸。アプローチの敷石と植栽が見え隠れする。

  • 花立町の家-17

    右の板塀とその後ろのカシの木は既存を残したもの。新たに造った駐車場の寄棟は伝統的な工法を用いて調和を図っている。中央の入り口から右に折れて建物にアプローチする。

<< これまでの仕事一覧へ戻る