京都駅から地下鉄で一駅いった五条に、数年ほど前に改修を手がけ、現在は関西方面の仕事の拠点として活用している京町家があります。「京都分室」と名付けたこの町家は昔ながらの佇まいが残るトンネル路地内にあり、ツシ二階と呼ばれる天井の低い小屋裏を有した、間口2.5間×奥行き3間、20坪ほどの小さな建物です。
いうまでもなく京都には独特の風土と文化があり、今でも町中に長い歴史とのつながりが息づいています。改修した町家も過去のものではなく、今日まで絶えず人の暮らしの器として機能し続けてきた住宅です。今回の改修では100年という、この町家が経てきた時間を途切れさせないよう、京町家の寸法と伝統素材を用いて、伝統的造りに習った改修を試みました。
柱と梁の骨格を極力変えずにオリジナルの屋根の架構を生かしながら、断熱改修と耐力補強を含めた全面改修を行いましたが、風土と文化、技術の継承を考える貴重な機会となりました。
プランにおいては間口2.5間のうち、玄関が位置する1間に水廻りや階段といった機能を配置したことで、残りの1.5間に寛ぎのためのまとまったボリュームの居場所を設けることができました。この町屋が元々有する寸法や構成といった素質に助けられ、必要な空間要素が自然と収まり人体寸法にあったスケールの空間ができたと思います。
また、増築されていたユニット浴槽を取り払って庭を復活させ、座敷との間に庭を楽しむ庭座を造ったことで、20坪の中にもさまざまな光や景色のある居場所が生まれました。
この改修を通して、伝統と現代の暮らしとが対比としてではなく、一つのものとして感じられる自然な建築の在り様を提示できたのではないかと思います。
所在地:京都府京都市下京区
構造:木造2階建(改修)
敷地面積:51.57㎡(15.60坪)
延床面積:65.38㎡(19.78坪)
用途地域:商業地域/準防火地域
施工会社:ツキデ工務店
設備:エアコン
家具:hao&mei 傍島浩美
写真:西川公朗
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増築されていたユニットバスを取り払って復活させた坪庭。上部には南からの直接光が差し込んでいる。
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玄関土間に階段をかけて立体的に動線の処理をし、ゆったりした階段を設けた。
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階段室の内観。家具用のナラの無垢材を組み合わせて構成した。
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ダイニング側を見る。左の窓は既存の柱を取り払い、構造を組み替えることで幅広く取ることができた。
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オリジナルの梁と垂木、野地が現しとなっているツシ2階の空間。
梁下の高さは1,500ほど。
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便所の手洗い。天井高が低い分、床を下げて空間を確保した。
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在来工法で造作した浴室。明かり取りの窓から光が差し込む。
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2階廊下にキッチンと家電が並ぶ。
機能的なものがこの一間の空間にコンパクトに納まっている。
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玄関引き戸の左側柱は下部の傷んだ部分を根継ぎして修復した。
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骨格を残して全面改修した外壁と開口部。出格子は周辺の京町家に習ってデザインした。
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出格子の詳細。上部は通気のための開口となっている。
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トンネル路地を入った先の袋小路に古い町家が5軒並ぶ。左手に改修した町家の白木の出格子が見える。
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路地奥から外観を見る。大屋根の瓦は一旦下ろして断熱材を施工し、桟葺に変えて戻す工事とした。
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