Yasuko Kumazawa Architect Office

つくるということ

19.09/06 [ 日々 ]


最近読んだ本に、常日頃、感じていたことがちゃんと言葉で表現されていました。
本にはこんなふうにあります。

ちゃんと「ものを作る」という作業は葛藤を不可避とする。
葛藤は時間の別名である。
「時間をかける」とはすなわち「自分の都合」だけで生きてしまう人間の「思い込み」という美しからぬ異物を取り去るための行為なのです。
「葛藤、ためらいは完成のための研磨剤」

さらにこんなふうに続きます。

ところが人間はある時、この「時間がかかる」を「人間の欠点」と思うようになりました。
機械化による大量生産は、ものを作る人間から、「ためらい」という時間を奪いました。
ものを作りながら「ためらい」という研磨剤でろくでもない「思い込み」を削り落とし「完成=美しい」というゴールへ近づけるプロセスを排除してしまいました。

今の世の中はこのように、時間をかけることが少なくなり、コンビニエントなことが求められます。
観念がそのまま形になってしまったものが氾濫し、美しくないもので満ち溢れています。

時間的短絡は本当にいいもの、美しいものを生み出しはしないのだと思います。

先日、静岡県藤枝、山間部の集落にお住いの建主に、プランを提案させていただきました。
最初の打ち合わせから2ヶ月半ほど時間をいただいてからのご提案でしたが、沢山時間をかけたことに対して、逆に大きな感謝の言葉をいただきました。

世の中の短絡的なことに反抗して、時間をかけるを大切にしてきたことが間違っていなかったと確信でき嬉しく思います。







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